第18章

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彼に対して、このような感情になれたことが嬉しい。 心から笑えることが嬉しい。 「私はユイランの付き人だもん。嘘なんてつけないよ」 誰からの指図ではない、自分の意思。 それが例え、自分には良くないことでも。 「救いようのねぇバカだ」 (……あ!) そう呟いたユイランは、心なしか少し微笑んでいるように見えた。 城下町に視察にきた三人は、村人達の視線を惹き付けていた。 それもそのはず、何せ一国の王子と隣国の王子、王女も一緒なのだから。 「……おい、あの方……ユーフェン様じゃないか?」 「んなはずないだろ……。王子様がこんなしなびた村に来るかよ……」 「いやでも……あの神々しい金の髪は……! しかも二人も……」 (やっぱり目立つかな……) ユーフェン達はできるだけ村人に近い格好をしてきていた。 装飾品も最低限におさえた。 しかし白の妖精の証である金の髪だけは、隠しようもない。 「ふふっ。村人達、ユー兄様に見惚れていますわね」 「困ったな……。かと言ってローブを着るわけにもいかないし……」 髪の色は隠せない、それは過去に学んだこと。 「騒ぎになったらなったでいいではないか! もう視察も後少しで終わるというのだし……」 グルーヴは手に持っている資料をパラパラと捲って見せた。 その資料には農作物のことや、民の希望など色々と書かれている。 「うん、そうだね」 そう言ったユーフェンは自分の髪に手をやり笑った。 「ねぇユー兄様。折角来たんですもの、どこか茶屋にでも入りませんか?」 たくさん並ぶ出店の中に、ひらひらと呼び込みの旗が揺れている茶屋があった。 天気が良くないためか、客はあまりいないようだ。
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