第18章

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「そうだね、少し休憩にしようか」 「はい!」 アシュリは嬉しそうにユーフェンの腕に飛び付くと、その足を茶屋に向けた。 「お兄様、何なさってるの? 早くいらして下さい」 「あ、あぁ、マイハニー」 (もしや僕、ちょっとお邪魔虫……?) グルーヴはアシュリ達について行く足をゆっくり止め、片手を口元に持っていき叫んだ。 「マイハニー! ユーフェン殿! ちょっと僕は気になることがあるから後で行くよ! 先に行っててくれたまえ!」 「え……、グルーヴ!?」 (お兄様、ありがとう) 二人に背を向けて走って行くグルーヴを見送ると、アシュリはユーフェンの手を握った。 「ユー兄様、先に行きましょう。お兄様は後でいらっしゃいますから」 「あ、うん……」 ユーフェンは彼女に手を引かれ、共に茶屋に向かって行った。 そんな二人の様子を、民家の影に隠れて見守る姿が一つ。 (マイハニー、頑張るのだよ!) グルーヴは暗く湿っ気の多い場所で、時間を潰すことになった。 茶屋に入った二人は、赤い布がかかった長椅子に腰かける。 つるつるとした机は木製でよく磨かれており、ほんのりと木の香りが鼻をくすぐった。 視察では歩き通しだったため、足の疲れが落ちていくようである。 「これはこれはユーフェン様、アシュリ様。このような所に来て下さって」 茶屋の店主が頭を下げながら近寄ってくると、「どうぞ」と二人にメニューを渡した。 とは言っても品数は限られており、五品程しかない。 ユーフェンはそれを暫し眺めると、メニューを返しつつ言った。 「このフルーツ餡、二つくれるかな?」 「へい、かしこまりやした」 店主は頭を下げ、店の中へと戻って行く。 静寂が訪れた。 店の中で、作業をする音しか聞こえない。 アシュリがユーフェンを横目で見ると、彼の髪が風で柔らかくなびいた。 (綺麗……)
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