第18章

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「朝から何を気にしてんだ」 「……あ……」 何も満足にできない程、気が散って仕方がない。 何も手につかない。 「それは……」 理由はわかっている。 何を恐れているのかも。 「またユーフェンかよ……」 彼女の心情を察したユイランは吐き捨てた。 リオンはというと、図星を指されたことに顔を赤らめている。 (わかりやすい……) ユイランは窓の外を見つめた。 パラパラと小降りの雨が瞳に映る。 「あいつなら心配いらねぇよ」 「でも……」 「オチたりしねぇさ。……絶対」 伏し目がちに言うユイランは、どこか憂いを帯びていた。 絵になる光景に、目を奪われる。 「どうして『絶対』?」 ユーフェンとユイランは仲が悪い。 顔を合わせれば、憎まれ口ばかり叩いている。 それなのに、ユイランはユーフェンが何を思っているのかわかっているようだ。 彼は視線をリオンに移す。 「お前、どこまで知ってんだ」 「え……?」 「俺達のこと」 まだ明かされていない王家の秘密。 そして、ユーフェンやユイランのこと。 色々なことはあったが、彼女は何一つ解決できないでいるのが現状である。 彼の発言によってそれを実感させられたリオンは、口を閉じた。 「俺は、最初からあいつを嫌ってたわけじゃない。今みたいになる前までは、それなりに信頼してた」 それは、幽閉される前のことだ。 リオンは息を飲んで次の言葉を待った。 彼はベッドから足だけを下ろすと座り直す。 「あいつの心が昔と変わってなければ、俺が知ってるあいつなら、アシュリを選ばない」
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