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もし、変わっていたらとふと頭によぎったけれど、思考を止めた。
自分のユーフェンへの想いが、間違ったものになってしまいそうだったから。
『帰ってくる頃には、心ここにあらずになっているかも』
昨日のアシュリの言葉がどういう意味を表すのか未だわからないが、何かが起こりそうな予感がしていた。
「……あれ?」
リオンは窓から見える、ある人影に気付いた。
城門に佇む一人の人間。
僅かに降り続ける雨に打たれているのに、それを気にする素振りも見せずにそこに立っている。
「誰……?」
ユイランも気になって窓の外を見やる。
「アシュリだ」
雨粒でよく見えないが、白とピンクのフリルがたくさんついたワンピース、柔らかそうな長い髪のポニーテールは間違えようのないもので。
「どうしてアシュリ様は一人で……? ユーフェンとグルーヴ様は?」
「俺が知るかよ」
さほど大したことではない、とでも言うように、傍に置いてある本を手に取り読み始める。
だがリオンはアシュリが気になって仕方なかった。
あんなにも強気だった王女が、今にも脆く崩れ落ちてしまいそうだったから。
あれほど一種の恐れを感じていたのにも関わらず、放っておけなかった。
リオンは部屋を飛び出し、アシュリの元へ向かっていた。
足が城門に近付くにつれ、鼓動が高鳴っていく。
たどり着いたとしても、彼女に何て言葉をかければいいのかわからない。
それでも、彼女は走った。
アシュリのために。
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