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「どうしたの? 元気ないね?」
心配そうに見上げるライト。
リオンは自分の頬を軽く叩くと、にっと笑った。
「そんなことないよ。元気、元気!」
「ほんと?」
途端に明るさが戻るライトの表情。
「あ! ボクね、これからアシュリとおやつ食べるの。アシュリが国から持ってきてくれたおやつなんだよ。一緒に食べようよ」
軽くなった心も、やはり名前を聞くと重くなる。
リオンはアシュリに会うことを恐れるようになっていた。
「……ううん、私仕事残ってるから。それに着替えもしないとだしね」
彼女は笑いながら服の裾を抓んだ。ポタポタと滴が落ちている。
ライトは残念そうに肩を落とした。
「えぇ~、美味しいのに……」
「ごめんね、ライト」
それだけ言うと、また廊下を歩き出した。
(そうだ……私には仕事が残ってるんだ。色々考えておろそかにしちゃいけない……)
「リオン……?」
リオンの背中を見送るライトの声は、彼女に届くことはなかった。
自室に戻り、身だしなみを整える。
髪をきちんと乾かし、新しい服にも着替えた。
時計を見ると、昼の一二時近くになっている。
(お昼ご飯持って行く前に、朝の食器片付けなきゃ)
ゴミ出しで大分時間を食ってしまった為、いつもなら片付けてある食器もそのままだ。
リオンは急いで部屋を出、ユイランの部屋へ向かう。
だがその扉を開けようとしたとき、中からユイランとは違う人の気配を感じた。
(……誰……?)
いつものようにノックをして、扉を開ける。
カチャリ、という音と共に振り返ったのは、グルーヴだった。
いつもは鍵で閉まっているユイランの部屋。
(どうしてグルーヴ様が中に……)
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