第19章

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ユーフェンが好き。 好きだからこそ、受け止めたい。 否、受け止めてみせる。 (今はユーフェンいないはず) 時は夕方。 今アシュリに会ったということは、ユーフェンも視察から帰ってきたばかりのはずだ。 だとすれば、その結果報告を王にしているに違いない。 進む足が早まる。 鍵を握る手の力も強まる。 (ユーフェン、ごめんね) 研究室が見えた。 どの部屋よりも少し大きいその扉は、前よりも小さく感じた。 それは、いつでも自分が開けることができる、ということだからであろう。 (緊張する……) ポケットに封印していた鍵を取り出す。 震える手で、鍵穴にそれを差し込んだ。 ――カチャリ。 扉の奥で、開放される音が小さく響いた。 リオンは周りを一確認する。 遠くの廊下で使用人達の話し声が聞こえるが、こちらに来る気配はない。 (……よし) 両手を扉に添えて、重く堅いそれを押した。 錆びているのか、耳障りな音が鳴る。 耳を塞ぎたくなるような音だ。 リオンは耳の代わりに目を閉じて、力いっぱい扉を押し続けた。 (……っ) そして、扉は止まった。 煩い音も、途端に消える。 「あ……っ!」 目を徐々に開けていくと、通常の部屋とは違う、異様な空気。 部屋は全体的に暗く、青い光沢に包まれている。 壁際にある棚には、様々な薬品が並べられていた。 「この部屋は一体……?」 リオンは一つの薬品を手に取ってみた。 ラベルに書かれている文字を読もうとするが、異国のものか全く読めない。 (わからない……。この部屋、そんなに重要な部屋なの?) 広い部屋の中を、壁に沿って歩いてみた。 壁一面の棚に埋まっている薬の数々に、目がくらみそうになる。
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