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(あなたは……誰ですか? ユーフェンの、何ですか?)
体中の血が騒ぐ。
頭が割れそうな程、激しい痛みが伴う。
まるで、夢を見ているようだった。
現実に一番近い夢。
(これは……)
眠っているわけでもないのに、次々と頭に情景が浮かび上がる。
リオンも知っている場所、ユーフェンの部屋。
家具の配置は今とあまり変わってはいない。
けれど、確実に違うことが――。
『ノア、今から出掛けるの?』
夢の中のユーフェンが口を開ける。
今よりも少し幼い王子。
年齢は、一六歳くらいというところだ。
ノアと呼ばれたその女性は振り返る。
「……!」
やはり少し幼い顔をしているが、この機械の中の女性と同一人物であった。
ノアはグリーンの瞳を細め、柔らかく微笑んだ。
『はい。何か必要なものがあるなら買ってきますよ?』
(あれ……?)
リオンはノアの発言にはっとした。
いつであったか、同じような発言を自分もしたことがある。
(……そうだ、私ユイランに……!)
村へ行くとき、ユイランに聞いたこと。
このときはあっさり「いらない」と言われてしまった。
ノアも自分と同じような発言をする。
――ということは。
(ユーフェンの、付き人!?)
心がざわめく。
今のところ、現付き人であるリルとソルトは出てきてはいない。
(まだ……わからないよ)
リオンはその夢に集中した。
情景がまた変化し、今度はとある店へと変わった。
村にあるその店は、アンティークな物を置いている土産物屋。
必死に何かを探すノアの姿。
『お嬢さん、何をお探しで?』
店の中年の男が声をかけると、彼女は商品から男に視線を移した。
『ブローチを探してるんです』
『ブローチ? 誰かにプレゼントかい?』
男が冷やかすように言うと、ノアは幸せそうに笑った。
『はい! もうすぐ誕生日だから』
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