第16章

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そう思うも、彼女は気付いた。 ここ最近は頻繁にユイランの部屋に通っていた為、鍵は就寝のときしかかけていないのだ。 「やぁやぁ姫君! こんな所で会うとは奇遇だね! どうしたんだい? 何か用事かい?」 扉の前で立ち止まっている彼女に、グルーヴは満面の笑みで声をかける。 ふとユイランの方を見ると、怒っているような驚いているような、そんな顔を彼女に向けていた。 (私、もしかして来ちゃいけない時に来ちゃったのかな……) リオンはグルーヴの方に向き直り、慌てて声を出した。 「あ……あの、グルーヴ様! 私、後で出直しを……っ」 「いやいや構わないよ! どうせ大したことのない話だからさ!」 断ろうとする彼女の背に手をやり、中へと促すグルーヴ。 ユイランはもうリオンを見てはおらず、険しい表情でグルーヴを見つめている。 (本当にいいのかな……) 何故か、居心地が悪かった。 ユイランの機嫌が、最悪に悪いことも関係しているのだろう。 「さて……」 リオンが中へ入り扉を完全に閉めきると、グルーヴは珍しく落ち着いた声で言った。 「君は、まだこんな所に居るんだね」 リオンは寒気がした。 自分達に向けるような表情や声ではない。 先程の性格と、まるで違う。 それは、アシュリのときと同じように。 グルーヴはユイランの前髪を乱暴に掴むと、ぐっと上げた。 ユイランは痛みで顔をしかめる。 「全く憐れな化け物だね。いい加減居なくなれば、この国はさらに平和になろうに……」 (どうしよう……。足が、震える……) 「あ……あの……」 自分が助けなければ。 ユイランを救わねば。 だが、思うように声が出ない。 「ねぇユイラン。何ならこの僕が、殺してあげるよ?」 グルーヴは不敵な笑みを浮かべるが、ユイランは鼻でフン、と笑った。
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