ホワイト・クリスマス

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 そのうち雪が降り始め、ホワイト・クリスマスか、と独りごちた。本当なら今頃、絹代と二人でシャンパンでも飲みながらケーキを食べているはずだった。そして、プレゼントを渡して……。  いつでも渡せるようにと持ち歩いていたが、こいつももはや必要のないがらくたと化した。ダウンコートのポケットから小さな包みを取り出し、暗闇へ向かって投げつける。ちくしょう、と胸の内で叫んで。  ふと、プレゼントを投げ捨てた辺りで何かが光っている気がした。反射的にライトを向けると、そこには白い人影があった。  踵を返し、逃げた。とても人間とは思えない。死ぬつもりでここへ来たとはいえ、得体の知れないものの餌食にはなりたくない。せめて安らかに眠らせてほしいのだ。こんな状況でもなお恐怖という感情が残っていたのは意外だった。  捕まればどんな恐ろしい目に遭うかわからない。無我夢中に駆けるが、雪に足を取られて思うように走れない。そして、急に体のバランスを崩した。暗闇の中で激しく回転し、体のあちこちを打つ。ようやく止まったかと思うと、全身、中でも両脚に激痛が走った。過去の経験から骨を折ったらしいことが分かる。ただ、今回は両方だ。  懐中電灯がどこかにいってしまったので周囲はほとんど見えないが、どうやら斜面を転がり落ちてしまったらしい。体を動かそうとすると神経をナイフでなぞられたような痛みが走った。立ち上がることすら難しい。
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