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ホワイト・クリスマス
どこをどう歩いただろうか。夜の帳が下り、月明かりも差さない山の中では、懐中電灯の照らす部分が視界のすべてとなる。周囲に存在するのは砂糖をぶちまけたように積もった真っ白な雪と、墓標のごとくそびえる木々だけであり、自分以外に生命の気配は感じられない。
ざくざくと雪を踏みしめながら山の奥を目指す。明確な目的地があるわけではない。なるべく人目につかないような場所があればそこがいい。誰かに探してもらったり、見つかって葬式を出してもらったりするのも気が引ける。野生動物と同じように、そのまま土に還ればいいと思う。市街地から歩いてきたので、おれがこの山に入ったことを知る者はいないだろう。世間的には行方不明ということになるはずだ。絹代がそれを知ったときにどう思うかまではわからないが。
厚着しているとはいえ、ジーンズとスニーカーは雪山向きの服装とは言いがたい。すでに足下は水浸しで、凍ったかと思えるほど冷え切っている。そもそも登山経験もない素人がこんな時期に、しかも夜中に山へ入ること自体が自殺行為に違いない。
――自殺するために来たんだろう?
口に出して自分に問いかけ、そうして卑屈な笑みを浮かべた。もう笑うしかなかったのだ。
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