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情けない。
そんな言葉が、頭の片隅を掠めはした。
自分でも呆れるほど、意志が弱すぎると思う。
いい年をして、お前は猿かとも思う。
だが、真友子の甘い言葉が大祐の理性の限界を引きずり寄せ、一気に乗り越え突っ走らせた。
「まぁゆ。僕は、まぁゆがすっごく、すっごく好きだから。嘘じゃないから」
大祐は、ギュッと天井を見つめたまま宣言するような声で言う。
「うん、分かってる」
柔らかな彼女の声を耳に、大祐はクルリと顔を彼女に向けた。
「あのさ、本当にこれが目的じゃなくて、僕は丸ごとまぁゆが大好きだから」
分かってるよ。
再度頷いた真友子の甘い声を耳に、残っていた大祐の最後の理性が淡い煙の
如くきれいに消え去る。
まぁゆ。
そして大祐は、もう自分が彼女の名を呟いたことすら気付かぬ内に、
自ら望んだ境界線の毛布を蹴り飛ばしていた。
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