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「その国で、魔物討伐専門組織を立ち上げる」
「ここでもいいじゃない」
「ここは、立ち上げる必要がないほど平和だ。もし、魔物が来ても村の者で討伐ができる。けれど、人間の住む街は違う。力が弱い者が多いんだ。だから俺が魔物討伐専門組織を立ち上げて、依頼を受けて魔物を討伐するんだ」
まだ資金は貯まっていないから、街で働きながら国王に交渉して組織を立ち上げるのだという。魔物討伐専門組織だけではなく、店を開く場合は国王に報告しなくてはいけないのだ。どのようなことをするのか、それらを話し許可を貰えばいいのだ。
そして、書類に必要事項を記入してしまえばいい。書類通りにやっているのかを何度か確認するためにやって来るが、記入した通りにしていれば大丈夫だ。もしも異なることをしていれば、すぐに廃業となってしまう。
「大丈夫だ。心配することはないさ」
何を根拠にそう言うのか。この村から出て行く者は多いが、その半分は戻ってくるのだ。別の街での生活に馴染めなかったり、差別を受ける者が多い。そのため、すぐに戻ってくる。
ウォーヴァ―とアリエスの幼馴染も何人かが戻って来ている。それなのに、ウォーヴァ―は出て行くというのだ。
もしもここで別れてしまったら、きっとウォーヴァ―とは二度と会うことはない。アリエスはそう思っていた。彼のことだから、何があっても諦めることはないのだ。
「いつ、出発するの?」
「1週間後だ。両親には話して、許可は貰ってる。……そんな寂しそうな顔はするなよ。大丈夫だ。行く時は家に寄るから」
そう言ってウォーヴァ―はアリエスの頭を右手で撫でた。
――いつまでたっても、私のことは妹としか思っていないんだ。
ウォーヴァ―の行動で、自分を恋愛対象として見ていないことはわかっていた。それでも、アリエスは諦めきれなかった。ずっとウォーヴァ―のことを思っているのだから、別の国に行くというだけで諦めることはできなかった。
それからすぐにウォーヴァ―は、仕事へと行ってしまった。今のウォーヴァの仕事は、重い荷物の配達だ。隣の村と、この村を何度も往復するのだ。
力仕事と体力には自信のある彼には合っている仕事だと思っていた。けれど、彼はその仕事に満足していなかったのだ。だから、この村を出るのだ。
「……よしっ」
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