短編06 白龍とサトリ

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「白龍に会いたがっていたでしょ?」 「覚えていたの? 流石エリスちゃんね」  そう言いながら、サトリは人数分の飲み物を用意していく。注文をしていないため、料金は取られるのかと疑問に思わないでもなかったが、龍は何も言うことなく準備をしているサトリの後ろ姿を見た。 「それが終わってからでも、白龍とツェルンアイの魔力を見てほしいんだけど……いいかな?」 「ツェルンアイって、そちらの女性ね」  龍の言葉に返しながら、サトリは用意した飲み物をテーブルに置いて行く。白龍の前にジュースの入ったコップを置き、白美の前にはアイスレモンティーの入ったコップ、残りは全員がコーヒーだ。  自己紹介をしていなかったため、ツェルンアイはサトリと目を合わせて自己紹介をした。一瞬目を細めたサトリは何も言わなかったが、もしかするとツェルンアイの髪と目を見て気がついたのかもしれない。  それだけではない。白龍とツェルンアイには、サトリが心を読めるということを話してはいないのだ。だから、意識せずとも読んでしまう心により、サトリはツェルンアイが災いをもたらすと気がついたのだ。しかし、それでも何も言わなかったのは、龍達に話していないということを知った優しさからではない。  彼女は龍達と共にいる。だから自分に関わることがあまりないため、災いが自分に降りかかるとは思っていないからだ。正直、災いだろうとサトリにはどうでもいいことだったのだ。だから、目を細めただけで何も言わなかったのだ。 「いいわ。じゃあ、まずどちらから調べる?」  そう言ってサトリは、水晶玉を取り出した。どちらから見ると聞いてくるサトリに、エリスは「それなら、まずツェルンアイからがいいんじゃないかしら?」とコーヒーを飲みながら言った。  白龍は、それがどんなものかは知らない。ツェルンアイも知らないのだが、実際に見せて白龍が怖がらないようにするためでもあった。 「それじゃあ、これの上にどちらの手でも構わないから、翳してもらえるかしら」  ツェルンアイの前に水晶玉を置いて言ったサトリは、決してツェルンアイと目を合わせようとはしなかった。しかし、彼女が気にすることはなかった。
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