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右手を持ち上げて、水晶玉の上に翳す。すると、水晶玉はゆっくりと白く光り始めた。獣人も、人間と同じく魔力は白く光るのだ。しかし、ツェルンアイの魔力は多くないようだった。水晶玉の中で揺らめくそれに、サトリは黙って目を向けている。
「これは……地属性魔法は使えるわね。他は……身体能力変化に関係するものかしら。でも、魔力は高くないから、上級は使えないし、魔法を多用するのも危ないわね」
「私、魔法が使えるの?」
「ええ。この世界に住む者の多くは魔法が使えるわ。中には使えないって者もいるけれど、一握りね」
「地属性。誰か使える人はいたかしら?」
エリスの呟きに、龍も地属性魔法は使えないためツェルンアイに教えることはできない。もしかすると、自分の力で頑張るしかないのかもしれない。
水晶玉から手を離すと、光はゆっくりと消えた。そしてその水晶玉を持つと、サトリは白龍の前に置いた。静かにジュースを飲んでいた白龍はサトリと目を合わせると、翳してもいいとわかりゆっくりと右手を翳した。
少し手が震えている白龍の頭を、龍は撫でて安心させてあげる。白龍は頭を撫でられることが好きだ。龍に撫でられるだけで、安心するのだ。
翳していた手の震えが収まると、水晶玉が光り始めた。その色は龍の時とは違い、白い。しかし、僅かに黄色いそれを見ると、白龍もやはり人ではないということがわかる。
「……白龍ちゃんは、まず炎ね。これは、龍と同じように特殊な『白龍』という生き物だから、ブレスはすぐに使えるわね。ただ、龍とは違い赤い炎。それと……光属性ね。だから、回復とかが使えるわ。攻撃魔法よりも、守る魔法が使えるのね。あと、これは白龍ちゃんだけじゃなくて、みんなに言えることなんだけれど。魔力はもっと大きくなるわ。白龍ちゃんは子供だから、大人になったら、龍と同じくらいになるかしら?」
サトリが言うように、白龍の魔力は小さかった。どうやら、それはまだ子供だかららしい。大人になれば、魔力も大きくなるというのだ。それは白龍だけではなく、龍達もだという。
全く変わらない者もいるが、魔法を使っているうちに魔力が少しずつ大きくなってくるのだという。それは、魔法を使える回数が増えるということだ。しかし、魔力は命ともいえるため、使いすぎてしまえば危険なことになることは変わりない。
「魔法、今、使えないよ?」
「あら、使ったじゃない」
「?」
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