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エリスの言葉に白龍は首を傾げた。魔法を使った記憶はないのに、エリスに使ったと言われたからだ。いつ使っただろうかと白龍は考えたが、思い当たらなかった。
「お歌、歌ったでしょ?」
「歌った!」
「その時、みんな笑顔だったもんね。魔法だよね」
「ま、ほう……」
エリスと白美は、白龍の歌でみんなが笑顔になったことが魔法だと言いたいのだ。それは、白龍も魔法を使えるんだと元気づけるものだったのかもしれない。
たとえそうだったとしても、白龍にとってはよかったようだ。白美の言葉を聞いて、白龍は嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「それ、まほう?」
「魔法だよ、魔法! だって、笑顔になると幸せになるんだもん!」
笑顔を浮かべて言う白美に白龍は大きく頷いた。たしかに、今笑顔を浮かべている白美は幸せそうだった。だから、白龍もさらに笑顔を浮かべた。
それを見て、サトリを含めて龍も笑みを浮かべた。今は魔法を使えないことにがっかりしないかと思ったのだ。使えるはずなのに、白龍は一度も使っていないのだ。幼いため仕方ないとは言っても、白龍は龍の役に立ちたいと思っているのだ。使えるのに、使っていないと知ればがっかりするかもしれない。
「さあ、それじゃあ白龍ちゃん。お菓子をどうぞ!」
そう言ってサトリは白龍の前にお菓子を置いた。もしかすると、サトリは白龍にお菓子を渡すために用意していたのかもしれない。
さまざまな種類を置かれ、白龍は隣に座る龍を見上げた。そんな白龍を見て、龍は何も言わずに食べていいと頷いた。一応、エリスのことも見て確認してから、白龍はクッキーの入った袋を開けた。
そして、一口を食べると美味しかったのか、笑顔を浮かべた。そして、隣に座るツェルンアイにもわけている。
「貴方達、あまり来てくれないけど、気軽に来ていいのよ?」
「そんな気軽に来れる距離じゃないのよ」
ヴェルオウルからルイットまでは少々遠いのだ。気軽に来てもいいと言われて、来れるはずもない。用事で来る時や、その日何もなければ来てもいいと考えながら、エリスもクッキーを一つもらい食べるのだった。
短編06 白龍とサトリ 終
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気軽に来てと言われても、行かないエリス達。
今回は、ただサトリに白龍を会わせるだけ。
ついでに魔力を見てもらっただけです。
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