第二話 幻の雪華

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 もう、痺れるような寒さや冷たさを通り越して何も感じなくなってきた。身を切るような風も、優しい囁きに聞こえる。雪で視界がブルーがかった白に染まる。最初は重く感じた私に降り積もる雪も、もう今は暖かい。眠い……心地良い眠りの誘いがやってきた。このまま眠ってしまえば、純白の世界に溶け込めそうだ。もしかしたら、私は木になって樹氷として訪れる人々を楽しませる事が出来るかもしれない。或いは岩になって、暖かくなって訪れる人たちの椅子代わりに役立ったり……。  パパもママも、私が居なくなって食費も教育費も洋服代も色々かからなくなってホッとするだろう。弟未満の私なんか、居なくなって当然だ。もしかしたら、新しく妹か弟が出来るかもしれない。私とは正反対の、可愛くて優秀な……。  ふと、由美子の事が脳裏をかすめた。弟の件以来、気まずくなって話していない。仲直りしておけば良かったな。由美子のせいじゃないのに……。そして大学の友達、幸代(さちよ)優香(ゆうか)に真紀。仲良くしてくれて有難うね。中高と仲良かった美千留(みちる)、高校の時つるんでいた……誰だっけ? もういいや……どうせ私の事なんて覚えてないだろうし。それにしても、眠いなぁ……。色々な思い出が、走馬灯のように頭を駆け巡る。死ぬ前の過去回想、というものだろうか。 「あれ? びっくりした! 雪だるまかと思ったよ。こんなところで何してんの?」  突如として、背後から朗らかな声が響いた。およそ場違いばほどに。思わずビクッとした。そして私の頭から、首、背中……と積もった雪を振り払う手……。誰? どうして見つけられたの? 雪と同化出来るように全身白づくめで来たのに……。
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