第二話 幻の雪華

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 どんどん雪が払われて、 「それっと!」  という力強い声とともに助け起こされてしまった。 「あの……」  そこにはお日様みたいな笑顔の男の子が立っていた。茶色の瞳は、悪戯っ子みたいにキラキラ輝いて居る。高校性くらいだろうか? なかなかのイケメン君だ。 「ダメだよ、こんな誰も来ないようなところでボーッとして。しかも全身白なんてさ」 「そういう自分だって、白のスキーウェアーじゃない」  あまりに自然に、快活に話す彼に釣られてしまう。 「お姉さん、助けて貰ったらまずは『ありがとう』だろ?」  彼はニヤリとする。顔から一気に火が吹いた。 「あ、その……ありがとう」  まさか、このまま雪と一体化したかったのに邪魔すんな、とは言えない。 「お父さんとお母さんや、友達が悲しむよ」  彼は当然の事のように話す。何だかムッと来た。 「それは、望んで生まれて期待された通りに、それかそれ以上に育った子限定だよ」  どうかしてる。こんな見ず知らずの年下君に……。 「それって、自分は期待外れだったからいらない子だ、て言いたいの?」  彼の笑顔が一気に曇る。そして半ば怒ったように問いかけた。 「そう、だって私、パパとママが溺愛していた弟を死なせてしまったんだもの。私の不注意で。だから許して貰えないし、元々弟ほど優秀じゃなかったからね。居なくなったら喜ぶと思うよ。友達にしたって、私の代わりはいくらでもいるしさ」  どうかしてる。初対面の子にこんなプライベートな事ペラペラと……。理性が働かない、どうして? だけどこの子、どこかで会った事があるような気がする。でも。どこで……? 「ふーん? 何だかシンプルな事を色々こねくり回して考えてるっぽいけど……。詳しく話してごらんよ」  男の子は私にホッカイロを差し出しながらそう言った。「ありがと」と自然に受け取り、「あのね……」と幼い時からの私を乞われるままに話はじめていた。
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