消しゴムが…

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 こうなってしまったら仕方がない。手を挙げるしかない。  僕は小さくため息を吐きながら試験監督の方へと目線を……  何ィ!??  そこには驚きの光景があった。  なんと試験監督の先生が寝ていやがった。ありえない。  これでは消しゴムが僕のもとへ帰ってこないじゃないか。  残りの試験時間――30分。長い。  だいたいまだテストが終わっていない。答案用紙も空欄だらけだ。  ん、待てよ……。  僕は先生が寝ていることを良いことに消しゴム奪還作戦を思いついた。作戦といってもただこの隙に取りに行くというだけだ。  僕は作戦実行のため席を立とうとした。しかし、  トンッ。  と、鋭い音が左隣から聞こえた。シャーペンを置いた音だ。しかし置いたにしてはずいぶんと乱暴だ。  僕はこいつの訴えたいことがすぐにわかった。取りに行くな、と言っている。目を見なくてもわかる。  なぜなら、左隣に座る彼は僕の幼馴染のメガネだからだ。  このメガネ、くそがつくほど真面目なガリ勉野郎だ。  恐らくこいつは「決まりを守れ」と言っているのだろう。  そんな彼の目線は答案用紙に向いたままだ。決してこっちを見ない。カンニングと思われるからだ。     
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