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『…また、会える…?』
『わからないよ』
そろそろと聞いてきたその子の声に、正直に答えた。己はまだ頑是ない子どもで、出来ることは限られていることを知っていたから。
『…もう…会えない…?』
『ううん。俺が大人になれば会いに行ってやれる!』
勢い込んで言い返すと、その子は、『ほんとう…?』とまだ慎重さを籠めて聞いた。けれど、その中には喜色もまたあった。
もう一度強く肯定すると、今度は明らかにほっとした響きで、『うん』と帰る声があった。
『あきひと、やくそく、約束だよ。きっと…ここに、会いにきてね』
会いに来てと請うた声。あれから何年経ったかわからない。あのとき約束した。だから、早く会いに行ってやらないと。
けれど。
あれは…、何処で、誰との約束だったのだろうか。
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