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そこに、フッ、と艶やかな茶色の髪がなびき、視界の隅を横切った。俺の視線が吸い寄せられるように追う。
背中に届きそうなぐらい伸びた髪を揺らし、女が颯爽と歩いていた。高級そうなショルダーバッグをかけ、ヒールを履いている。さらに連れもいないようだ。
まさに理想の獲物、なのだが……。
相手に気づかれぬよう一定の距離を保ち、俺は彼女のうしろ姿を眺めていた。
「……茶髪の、女」
つぶやきが口から漏れた。ワモンの言葉を思いだす。
だが、二の足は踏んでいられそうになかった。繁華街から離れるにつれ、人の数が減って、尾行に気づかれてしまう。
俺は意を決し、彼女との距離を詰める。目の前に現れた獲物を見す見す逃す道理はない。
俺はヤマト。闇のハンター。
呼吸をととのえ、彼女にさりげなくぶつかる。と同時に、彼女のショルダーバッグから目当てのブツをすばやく抜きとった。己の手腕に酔いしれる。
「ちょっと」
機嫌を損ねた猫のような目つきで睨まれた。ちらと見た女の美貌に思わず心を奪われそうになる。が、視線をあわせつづけるわけにはいかない。
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