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無言のまま、足早に立ち去ろうとした。
「あなた、ヤマトなの?」
しかし女の発言に、俺の足がピタリと動かなくなる。
振り返ると、美しい瞳が俺をとらえていた。
「まさか……チャコ!」
その名を口にした瞬間、俺の脳内に電撃が走り、いくつもの記憶が一気に押し寄せた。圧倒的情報量に眩暈を覚えつつ、なんとか耐える。
これまで何度も何度も繰り返されてきた、二人の転生の歴史。そして今、神のイタズラなのか、ついにお互い人間として出会うことができた。しかし、ここまでたどりつくまでに俺とチャコの関係性は修復不可能なほどに崩れていた。俺はチャコに一度殺され、その次は殺されかけている。
「……」
「……」
愛しあい、求めあい、語りあうべくして、俺たちは相見えたはずだった。けれども、俺たちは見つめあうばかり。怒り、悲しみ、喜び、さまざまな感情が俺の中で絡みあう。
しばしのあいだ、気まずい沈黙が流れる。それを切り裂くように奇天烈なメロディが突如として聞こえてきた。
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