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俺は喉が痛くなりそうなほど声を張りあげた。
ゴメンナーはそれに気づくと、ラジカセを地面に置き、スイッチを切った。ガション、と古びた音がし、あたりに平穏が戻る。
「よくぞ言ってくれた。実は、俺も吐きそうになっていたのだ」
だったら音をだすなよ! そうツッコミたくなる衝動を抑え、俺はこの場から立ち去るべく、ゆっくりとあとずさりする。チャコとの再会に今の自分を忘れそうになっていたが、俺はスリなのだ。つかまわるわけにはいかなかった。
ゴメンナーは、しかし、俺のそんな心境などおかまいなく、またも大声をだす。
「待ってくれ! まだ俺の謝罪は終わっていない」
俺の腕をとり、ゴメンナーが熱い視線を送ってくる。
もしやこいつは変態のフリをした刑事なのだろうか。そんな憶測が浮かび、すぐさま否定する。
「バカな遊びにつきあう暇はない。俺は急いでいるんだ」
すると、ゴメンナーはつかんでいる俺の腕を解放し、両膝を地面につけ、仰々しく土下座した。
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