最後の夜はお行儀良く

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最後の夜はお行儀良く

その異変は突然起こった。 そして余りにも自然であったため、発覚にはしばしの時を要した。 「いてっ。何だ今の?」 「おっと。静電気か……」 12月下旬。 既に『それ』は起きていた。 だが、人々が気づく事は無い。 「いててて! もう本当ヤダなぁ」 「何だよ、ノブカバーくらい付けてくれよ……」 日に日に静電気の被害件数は増え続けた。 だがそれは、死に至るどころか、怪我すら引き起こさない現象である。 当然ながら事件性もない。 故に放置された。 いや、誰も把握しようとしなかったと言うべきか。 すなわち一切の対策が施される事もなく、徐々に問題は大きくなっていった。 そんな中に迎えた大晦日。 人々は年越しを控えてライブだイベントだと、大都市へやって来た。 陽はとうに落ちていて、日付、すなわち年を跨ぐまであと僅かとなる。 スマホ片手にすれ違う群衆。 不特定多数の人物がすれ違う交差点。 そこで、突如として『パシィン!』という破裂音が響き渡った。 銃声か、それとも爆弾か。 誰もがパニックとなり街中を逃げ惑った。 音は間断なく響く。 いくつもの乾いた音が重なる。 まるで道の至るところで銃撃戦でも繰り広げられているかのようだが、それだけだ。     
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