新しい私へ

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どうやら私のマスクを外した素顔が気になるようなのだ。 非常に困る、とてつもなく困る。ほら、今もチラチラと私を見ているのを感じる。仕事しなさい、仕事を。もっと困ったことがあるのだがそれは……… 彼の視線を不快に感じない自分がいること。 何だかんだと彼の視線に気付いてから私も彼のことが気になってしまい、彼のことを気にかけるうちに惹かれ始めている自分がいる、残念ながら。 バスケをやっていたらしい彼は見た目ちょっとチャラいけど、体育会系だからだろうか年上をたてることが自然にできて、言葉も結構ちゃんとしてる。挨拶も自分からしてるし、フットワークも軽い。なんというか、大型犬っぽい、全体的に。 私には声を掛けるのが緊張するのか、ちょっと言葉のはじまりの声が裏返りそうになるのが可愛く感じる。でも私が上司からの指導に落ち込んでたら自然と声をかけてくれる、よく見てくれてるんだなぁと嬉しくなる。あれ?結構重症かも、私。 自覚してちょっと顔が熱くなるのを感じた。多分、赤くなってる。彼にバレないようにそっと座る位置を整えた、顔は隠せているはず。 …………それでも、彼が好きでも、素顔を見せることはまた別で。今まで本来のひなたとして過ごすことが出来ているのはマスクの存在が大きく占める。精神安定剤みたいなものなのだ、このマスクは。私が私であるためにマスクはどうしても外そうとは思えなかった。
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