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「波瑠さんには、とても良くしていただいているので、お話しようと思います。
ですが、紗英には話さないようにしてください。」
「はい、わかりました。」
私は何か深刻な話なのだろうと覚った。
「紗英は、小児がんなのです。
病院の先生方には、いろいろ手を尽くしていただいているのですが、長くは生きられないようです。」
私は元気そうに振る舞っている紗英ちゃんからは想像できない状況に、とても大きなショックを受けた。
「そうだったんですか?」
私はこれ以上言葉が出なくて、溢れそうになった涙をこらえていた。
「波瑠さん、紗英のことを気にかけていただいてありがとうございます。
病院で波瑠さんと出会って、最近紗英が楽しそうにしている姿を見て、私は嬉しく思っています。」
紗英ちゃんのおかあさんの言葉に、私は正直な気持ちを伝えた。
「私は紗英ちゃんに何もしてあげることができませんが、私は紗英ちゃんと出会えて良かったと思っています。
紗英ちゃんと話していると、紗英ちゃんは元気で楽しいお話をたくさんしてくれるので、私も元気が出るんです。
感謝しているのは、私の方です。」
すると、紗英ちゃんのおかあさんが私のことを聞いてきた。
「波瑠さんは、右足はどうされたのですか?
差支えなければ教えてください。」
紗英ちゃんのおかあさんの質問に、私は全日本スキー選手権大会のアルペンスキー競技で怪我をしたことを包み隠さず話した。
「そうだったんですか?
それは大変でしたね!
ごめんなさいね、悲しい出来事を思い出させてしまったようで…」
「いいえ、大丈夫です。」
私が答えると、紗英ちゃんのおかあさんが私にお願いをしてきた。
「よろしければ、これからも紗英のお友達でいてあげていただけませんか?」
紗英ちゃんのおかあさんの言葉に私は、
「もちろんです。
紗英ちゃんと私はずっと友達です。」
と笑顔で返事をした。
紗英ちゃんのおかあさんは安心した様子で、その日は帰宅した。
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