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ある日、紗英ちゃんからも私の足のことを聞かれて、紗英ちゃんのおかあさんに話した時と同じように、全日本スキー選手権大会のアルペンスキー競技で怪我をしたことを包み隠さず話した。
「波瑠ちゃん、すごいね!
波瑠ちゃんがスキー滑るところ見てみたい!」
紗英ちゃんの言葉に答えられないもどかしさを感じながら私は紗英ちゃんに返事をした。
「この足では、ちょっと無理だね!」
「そっか!」
紗英ちゃんは、少しがっかりしたようだった。
でも本当は、私は白い雪が怖いというのが本音だった。
ある日、私の病室にパジャマ姿の白髪の老紳士が訪ねて来た。
「私、小野と申します。
波瑠さんですか?」
私が、
「はい」
と答えると、その老紳士は自己紹介をはじめた。
「私はこの病院に入院しているのですが、波瑠さんのことを紗英ちゃんから聞きました。
実は私は義肢装具士です。
いや正確には、義肢装具士だったのですが、今は引退しています。」
私は小野さんが何のために会いに来たのか、まだ理解できなかった。
「何のご用でしょうか?」
すると、その老紳士は思いがけない話をはじめた。
「波瑠さんの義足を私に作らせていただけませんか?」
私は疑問に思って小野さんに質問した。
「義足があると、松葉杖に頼らずに普通に歩けるようになるのですか?」
私の質問に、小野さんはすぐに話しを訂正した。
「ごめんなさい。
私が作りたいのは、スキー競技用の義足です。」
この話に、私は大きな疑問を持った。
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