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「何故、スキー競技用の義足なのですか?」
すると小野さんは、紗英ちゃんのことを話し始めた。
「紗英ちゃんが波瑠さんがスキーを滑る姿を見たいようなのです。
この紗英ちゃんの思いを叶えられないかなと思って、波瑠さんに会いに来ました。」
小野さんが会いに来た理由が分かった私は、小野さんに率直に質問してみた。
「その義足は、高価なものですよね!」
すると小野さんは、さらに驚く話しをしてくれた。
「お金はいりません。
私は引退した身ですので、どこまでできるかわかりませんが、精いっぱい気持ちを込めて作って波瑠さんにプレゼントします。
でも、このプレゼントは、波瑠さんのためにすると思わなくていいです。
紗英ちゃんのために、波瑠さんにプレゼントするのです。」
私は小野さんのありがたい言葉にあまえていいものかどうか結論が出せなかった。
「少し考えさせていただけますか?
前向きに考えますので…」
私は少し時間をもらうことにした。
「わかりました。
実は私は明日退院ですので、連絡先をお伝えしておきます。」
小野さんは、私に連絡先のメモを手渡して病室を出て行った。
その1週間後、私も退院した。
退院してからもリハビリで病院に通っていた私は、できるだけ時間を作って紗英ちゃんの病室に顔を出していた。
紗英ちゃんは、私と話をするたびに、
「波瑠ちゃんは、スキーしないの?」
と聞いてきた。
そのたび私は、紗英ちゃんにスキーをするのは難しいと話していたけれど、小野さんの助言もあって、少しずつ考え方を変えていった。
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