銀杏並木に想いを寄せて

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お吸い物を作る予定だった鍋を横にどけてヤカンで湯を沸かす。 用意した急須に緑茶の茶葉を入れながら居間を横目で見ると、藤堂は薄い笑みを浮かべながら座って庭を眺めており、七瀬は無表情のままじっと正座している。 仕事中だから喋らないのか、元々会話の少ない二人なのかはわからないが綺麗な顔立ちの二人が沈黙して和式の部屋に座っていると、精巧に作られた人形のように思えた。 これがスーツではなく着物なら完全に日本人形と見紛うほどだろうなと思いながら、熱々に沸いた湯を急須に注いだ。 湯呑にも湯を注いですぐに捨てる。そして盆の上に急須と湯呑を三つ置いて居間に向かった。 「お待たせしました。」 あまり高級でない緑茶はすぐに色や味が出るため、長く置くと無駄な苦味が出てきてしまって美味しくなくなることは長年の経験で立証済みだ。 それぞれの湯呑に茶を淹れて二人に差し出した。 「ありがとうございます。」 にこにこと言う藤堂とは真逆に七瀬は軽く頭を下げた。 藤堂は湯呑に口をつけて少しだけ飲んだ後、ほっとしたと言わんばかりに息をついてもう一度庭を向いた。 「良いお庭ですね、こじんまりとしていますが奥ゆかしさがあって。」 「ええ、気に入っております。」 「あまり凝った手を加えていない分季節らしさがでていますし、そういえば木ノ下さんの洋服も秋らしくて良いですね。」 「はい、カーディガンもワンピースもお気に入りなんです。あの…それでご用件なのですが…。」 どうも藤堂は世間話をするのが好きな性質らしく、このままでは訪ねてきた理由を話し出しそうにないのでこちらからそれとなく切り出してみる。 七瀬も横目で藤堂に目配せするような仕草をし、藤堂はおっとと大仰に仰いでみせた。 「これは失礼しました。」 少し眉を下げて謝罪の言葉を口にするが、藤堂自身も少し悩んでいるような様子だ。
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