銀杏並木に想いを寄せて

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「うーん…噂をご存知ないとすると、どこからお話しましょうか。」 「それでは…噂はどこから流れているのでしょうか?」 幽霊が出る、などと寝耳に水な話だ。 生まれたときからこの家に住んでいるが、そんなものに出会ったこともなければ父母や夫も子供達からも聞いたことがない。まずは噂の出処が気になっている。 「どこから、と問われたら返答に困るのですが…近所の方々が噂しているのですよ。」 それもご存知ありませんか?と問われ私は首を横に振った。 最近近所付き合いもあまりしていないが全く話さないわけではない。 なのに一言もそんな話を聞いたことがないのは近所の人達が私に隠しているとしか思えないが、隠す理由も特に見当たらない。私に話したところで笑い話で終わることだ。 だとしたら逆に目の前の二人が怪しく思えてくる。 ありもしないうわさ話を出して探偵などと名乗って何かを企んでいるのではないかと。 とはいえ騙し取るようなものもなければ資産家というわけではない。 訝しんで思案していると七瀬が藤堂からこちらに視線を移した。 黒曜石のような瞳に見つめられると心の奥底まで見透かされているような気がして落ち着かない。 だからだろうか、お帰りくださいとは言えず気になっていることが口から出た。 「あの、普段からこんなお仕事を…?」 幽霊が本当にいるか否かなど探偵がやる仕事なのだろうかと疑問に思った。 藤堂は私の質問に首を横に振った。 「いやいや、さすがに幽霊探しは初めてですよ。」 「では普段はどんな…やはり事件の捜査とかですか?」 「残念ながらそれもありません。」 藤堂は一つ咳払いをして続けた。
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