1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「お連れ様? 見ていないですねえ」
食堂で従業員に聞いてみたが、知らないようだった。
一人で朝食を摂り、ぶらぶらと館内を回る。休憩所や風呂場にも彼の姿はなかった。
何気なく玄関を通った時、ふと下駄箱が目に入った。彼の靴が見当たらない。
思わず玄関から外を見ると、真っ白な雪の上に足跡が残されている。
雪が積もったら絶対にあの神社に行ってはいけない。
女将のその言葉が思い出された。
禁止されるとやりたくなる。笹井はそんな性格だった。
恐らく、一人で虫山神社に向かったのだろう。
自販機で缶コーヒーを買い、部屋に戻った。
そのうち戻って来るだろうと思い、持ってきた本を読み始めたが文章が頭に入ってこない。
ストーブの心地良い暖かさが眠りを誘う。次第に意識が遠のいていく。
手から本がずり落ちた衝撃で目を覚ました。
どうやら知らない間に寝入ってしまったようだ。
それにしても笹井はまだ戻ってこない。
流石におかしいと思い、着替えて玄関へと向かった。
振り続ける雪で笹井の足跡は消えつつあったが、まだうっすらと残っていた。
その足跡を追って、私も虫山神社へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!