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空は濃灰色の分厚い雲に覆われ、まだ昼前にも関わらずどこか夕闇のような怪しさが立ち込めていた。
宿から神社までは晴れていれば徒歩10分程度らしいが、この雪で足が思うように進まない。
まさか積もるとは思っておらず、靴は夏用のスニーカーだ。歩く度に雪が染み込んでくる。
虫山神社のある丘の麓まで辿り着いた。笹井の足跡は躊躇なく丘を登っているが、私はそこで躊躇してしまった。
ここから踏み出すと、後戻りが出来なくなる。そんな嫌な予感が襲ってきた。
今更かもしれないが、女将が言っていたことも気に掛かる。
それでも気がつくと神社に向かって登り始めていた。まるで何かに呼ばれているように。
周囲を枯れた木々が覆う道をひたすら進む。当たり前だが人気は全くない。
時折吹く冷たいが風が体を芯から凍えさせる。
体は震えつつも、何とか鳥居まで辿り着いた。
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