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思っていたよりも小さな神社だった。
大きめの祠といってもいいかもしれない。
あまり手入れはされていないようで、外壁は朽ちかけ、所々に錆びが目立つ。
それにしても笹井の姿が見当たらない。
足跡は神社の手前で消えている。嫌な予感がする。
正面の扉に手を掛けた瞬間、手の甲を虫が這いずり回るような不快な感覚が流れた。
思わず振り払うが、虫など何処にも見当たらない。恐る恐るもう一度扉に手をかける。
鍵はかかっていないようだ。観音開きにゆっくりと扉を開ける。
中には無数の虫が蠢いていた。
百足、蚯蚓、蜚?、蟋蟀、蜘蛛、蛾。思わず吐き気を催す。
扉を閉め、外の空気を吸って呼吸を整える。
真冬に何故こんな大量の虫が……。
もう一度扉を少しだけ開き、中を覗く。奥の方で虫が大量に密集し、山のようになっている。
山の麓に人間の手が見えた。
「笹井!」
声をかけるが反応はない。意を決して足を踏み入れた。
途端、無数の虫が足に絡みついてくる。靴の上を伝い、ズボンの裾から体の中心へと這い上がってくる。
手や顔面にも羽虫が舞い、袖や首元から次々と侵入してくる。
チクチクとした足の感触と、ヌメヌメとした蠕動の感触が全身が襲う。
気色悪さだけではない。全身を噛まれ、痛みも感じるようになってきた。
笹井の方に進もうとするが、足を動かすことができない。
想像以上の虫が絡みついているようだ。
思わず膝をつく。笹井が、いや自分自身が危険な状況にある。
毒を持った虫でもいたのだろうか。意識が朦朧としてきた。
心なしか笹井に群れている虫の塊が小さくなった気がする。
違う。視界がぼんやりと霞んできているのだ。
死を感じつつも体は全く動かない。
まさに意識が消えつつあるその時、背後で扉が開いた。
誰かが来た。その瞬間、私は気を失った。
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