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誰かが入ってきた。その音で私は目を覚ました。
ぼんやりと天井が見える。
見慣れない天井。だが、見た事はある。
「気がつきましたか?」
声がした方に頭を向ける。異様に気怠い。
「女将さん……」
「よかった。気がついたみたいですね」女将は大きく息を吐いた。
「ここは……」
「あなた方が泊まっていた部屋ですよ」
そうか、笹井と二人で旅行に来たんだった。笹井は、笹井!
さっきの出来事を思い出し、飛び起きた。
「女将さん、笹井は?」
女将はゆっくりとかぶりを振った。
「連れて行かれてしまったよ」
「連れて行かれた? 何処に?」
女将はしばらく黙り込んだのち、ポツリと呟いた「あちら側へ」。
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