蠱刑

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「その昔、ここら辺一帯は、与持家という豪族が支配していたんです。 与持家の初代、二代目は民達に愛される良き領主だったと伝えられています。 しかし、三代目の領主は異なりました。無茶な税の取り立てや、狼藉、横領を繰り返しそうです。 その三代目が行ったことの一つが大量の虫を使用した処刑方法で、蠱刑と言います。 まず、地面に人間大の穴を掘り、大量の虫を穴に用意します。そこに両手両足は縄で縛り全身を蜂蜜で塗られた咎人を放り込むのです。 穴の入り口は咎人の頭だけを出して板で塞ぎます。 体中を無数の虫に噛まれ、侵され、ゆっくりと死に至ります。 三代目はその処刑を雪が降る日に良く行ったそうでうす。 咎人の悶え苦しむ姿を見ながら酒席を楽しんだという悪趣味な逸話も残っています。 四代目となり、流石にその処刑は行われなくなりましたが、三代目の悪政が響き、与持家は次第に力をなくし、没落していきました。 あの虫山神社は処刑に使われた虫達を供養する目的で建てられました。 しかし、雪が積もった日に神社に向かった人が神隠しに遭うといったことが度々起こりました。 今ではここら辺の人口も少なくなり、そういったこともなかったのですが……」 その後、笹井の姿を見た者は誰も居なかった。
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