異動

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俺もいくつか注文した後で、思わず笑いが込み上げてきた。 「くくっ お前、いくら奢りだからって、ほんと遠慮 ないな。」 「主任様なら、余裕でしょ?」 伊藤は平然と言う。 「お前なら、主任手当てが大した事ないの、 知ってるだろ?」 俺が言うと、 「は? 知らないよ? 知るわけないじゃん。」 と答える。 「なんで? 宮本さんの給料とか聞いてないの?」 こいつ、何年も付き合ってて、彼氏の給料、知らないのか? 「知るわけないじゃん。」 「お前だってこの年になったら、結婚とか 考えるだろ? 給料とか気になんないの?」 「んー、ならなくはないけど、私より多い事は 分かってるから、それで十分じゃない? 少なくとも、生活に困らない収入がある事が 分かってればそれ以上はどうでもいいって いうか… っていうか、小川天は結婚、考えてるの?」 「考えなくもないけど、相手がいないからな。」 こいつ、すっげー、いい女かも。 今まで俺の周りに寄ってきた女は、ルックスと給料にしか興味なかったぞ? 「なんで? 小川天、モテるじゃん。」 「お前、向こうがどんなに好きでも、俺が 好きじゃなきゃ、付き合えないだろ?」 ルックスと給料に惹かれてやってくる女なんかと付き合えねぇよ。
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