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私は初めて外に出た。もちろんめつぼうくんを連れて。
目的地は一つ。海だ。
めつぼうくんに何回も読み聞かせた本。その本に海は書いてあった。
大きなくぼみに貯まっていて、どれだけ人が使おうともなくならない。でも、しょっぱくて誰も使わないらしい。すごく大きいので世界のどこからでも見られる。そして、青いらしいのだ。
はじめは嘘だと思った。よくある物語の嘘だと思った。でも、何度も読んでいるうちに見たくなった。本当にあると思うようになった。
私は海を見たくなった。
だから今日、旅に出るのだ。終わってしまう世界の最後の思い出に海を見るのだ。そして、汲んで帰るのだ。
左手には大きなバケツ。その中にめつぼうくんを入れて、私は歩き始めた。
まっすぐ歩く。ただひたすらにまっすぐ歩く。世界のどこからでも見られるなら、海はまっすぐ歩けばあるはずだと思った。
海はなかなか現れない。ここは世界のどこでもないのかも知れなかった。でも、私はあるいた。
太陽とともに私は歩いた。
私より背の高かった太陽はちょっとずつ低くなり、気が付けば私と同じ高さになっていた。
そして、紅く光りだした。
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