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僕はドアノブをガチャガチャとひねり、開けようとするが、カギがかかっていて開かない。ドアを力任せにノックすると、ドアが大きく開いて僕の目と鼻の先をかすめる。
「寒かったでしょ、早く入って。そば、出来てるから」
ドアを開けたのは、黒髪をポニーテールに結い上げた女性。黒縁のメガネの奥には知的な印象を与える瞳が輝いているが、僕を見つめるその瞳は、とても優しい光を宿していた。外の寒さに、腕をしきりにさすっている姿が、本当にいとおしくてたまらない。
僕は中に入る前に、彼女にぎゅっと抱き着く。彼女は一瞬目を丸くしたものの、背中に手を回してくれる。
「どんな人より、君に、最初に言いたくて。
明けましておめでとう。これからも、よろしくね」
――遠くの方で、百八回目の金が鳴ったのが聞こえた。
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