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改札を抜け、街に出る。外は、絶え間なくはらはらと舞う雪に包まれていた。寒さに思わずコートの前を合わせて、スマホを取り出して電話をかける。
「もしもし。今、駅を出た。今から向かうから」
到着したと電話を入れたが、短く「了解」とだけ返事が来て、電話は一方的に切れた。僕はスマホをポケットにしまい、手袋を付けると雪の街を歩き始める。
今まで何回も歩いた道だ、絶対に間違えるわけがないし、忘れるわけがない。駅からどれぐらいかかるのかも分かっている。だからこそ僕は、こんな夜中に目的地へ向けて歩いているのだ。ある目的のために。
さて、しばらくすると一棟のアパートの前に着く。周囲は既に深い闇に包まれていて、今にも何か出てきそうな雰囲気だが、そんなのは僕の妨げには一切ならない。
だが、意気揚々とインターホンを押すが、中からは何の反応もない。いつもならすぐに出てくれるのだが。僕はそう思って急いで電話をかけるが、スマホは虚しくコール音を鳴らすだけ。
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