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でね。先生。
そんな毎日を送りながら…
私、今更ながらふと考えたんです。
彼…私のどこが、そんなに良いんだろって…。
主人は、大金持ちで、芸術家です。
たくさんの美女が彼に群がりそうなものなのに…。
彼は、私を選んでくれました。
でも、私は取り立てて、美人って訳でもありませんわ。
それに、お屋敷には使用人がいるとは言え、私は家事が全くできません。
性格も、おしとやかじゃないし…
家柄だってそんな良くありませんわ。
それに、大の酒好きですし。
主人は、毎日の食事の時とリビングでくつろいでいる時は、面白い話をたくさんしてくれるんですけど、
それ以外の日中は、アトリエにこもりっきりで、ほとんどデートとかしてくれませんのよ。
私が外に遊びに行っても何一つ文句を言いません。
夜もベッドは、別々ですし…。
一体、私は彼にとってどんな存在なんだろ…。
なんて疑問が頭をよぎる事が有りましたね。
まあ、そんな事言うとバチが当たっちゃいますけどね。
それと…
主人…全然、私を自分のアトリエに入れようとしないんですよねぇ…。
ほら。
よく画家が言うコロシ文句が有るじゃありませんか。
『君の姿を絵に描きたいから、ずっと僕のそばにいて欲しい』
とか、何とか…。
でも、ウチの主人に限っては、特にそういうのも無いんですよねぇ。
むしろ、自分のアトリエに入れようともしない…。
それで実は、私…
一度、主人の外出中に、こっそりそのアトリエに入ってみた事が有るんです。
その時、主人は数日間、ヨーロッパの方へ行ってまして。
「仕事だから」と、私を連れて行ってはくれませんでした。
実は、主人…
仕事で頻繁に一人でヨーロッパの方に行くんです。
とは言え、
具体的にヨーロッパのどの国に行くのかは、私にも教えてくれませんけど。
でね、先生。
私、彼の留守中にアトリエに入ってみて…
いやぁ、びっくりしましたわ!!
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