2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
第零章 花園は遠く、憧れでしかなく。
きっとあれは、悪い夢。
私は草原に咲く色とりどりの花を見ていた。
紅、蒼、紫、桃、黄。緑色の葉もひらひらと花々と一緒に揺れている。
その中で、ひとつだけ咲かない花があった。気候か、それとも土か。原因は分からなかった。
でも、その日は来てしまった。
蕾が開き、花弁は開いてしまった。
あとは散ってしまうだけと知ってか知らずか、その花は嬉しそうに陽の光を浴びている。
ひとつだけなかなか咲かなかった白い花。
その花を無邪気に摘み取り、綺麗なまま押し花にした子供を、誰が責められるだろうか?
その子供は、幼い頃の私によく似ていた。
――きっとこれは、悪い夢。
最初のコメントを投稿しよう!