第零章 花園は遠く、憧れでしかなく。

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第零章 花園は遠く、憧れでしかなく。

きっとあれは、悪い夢。 私は草原に咲く色とりどりの花を見ていた。 紅、蒼、紫、桃、黄。緑色の葉もひらひらと花々と一緒に揺れている。 その中で、ひとつだけ咲かない花があった。気候か、それとも土か。原因は分からなかった。 でも、その日は来てしまった。 蕾が開き、花弁は開いてしまった。 あとは散ってしまうだけと知ってか知らずか、その花は嬉しそうに陽の光を浴びている。 ひとつだけなかなか咲かなかった白い花。 その花を無邪気に摘み取り、綺麗なまま押し花にした子供を、誰が責められるだろうか? その子供は、幼い頃の私によく似ていた。  ――きっとこれは、悪い夢。
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