第一章 永笑-とわ-

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咲希がそう言った瞬間、咲希の肩に居た赤い首輪の白い猫は、満足そうな顔をしてゆっくりと天へ昇るように消えた。 「ミケ、喜んでいたよ。これで安心して向こうに行けるって。春日さんにありがとうって伝えて欲しいってさ」 僕が咲希にそう伝えると、咲希も満足そうな顔をして一筋の涙を流した。 「ありがとう、笠井くん」 もう二度と笑うことは無いと思っていた僕が、咲希の口から出た「ありがとう」と言う言葉を聞いて久しぶりに心から笑えた。 咲希も僕を見て、ニコニコ笑っている。咲希は笑うとほっぺにえくぼができる。 僕がそのえくぼを見つめていると、「そういえば、笠井くんって呼んだの初めてだよね。笠井くん、そうやって笑ったら、きっと友達いっぱいできるよ」と声を掛けてきた。
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