プロローグ

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「気にし過ぎは身体に毒ですよ。確かに死は恐ろしい。死んだ後の世界を語れる人はこの世に一人も居ないですからね。知らない場所に行くことほど恐ろしいモノは無い。でも、比嘉さんが病気で死ぬよりも早く、僕が事故でこの世を去る可能性だってあるんですよ?」 「そんな縁起でもないこと言わんといてーな」 比嘉さんはそう言って顔をくしゃっとさせ、僕の膝に手を置いた。僕はその手をマッサージするようにギュッと握り、「食欲はありますか?」と訊いた。 「あぁ、食欲は少し戻ったかねぇ。大きい病院で抗癌剤治療している時と比べると、今の方が遥かに楽だわ。娘や息子の反対を押し切って止めてこの診療所に変えて良かったと今は思うよ」 「そうですか。最近、サトウキビ畑は息子さんに任せているんでしょう?」
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