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「あぁ、でもうちのバカ息子は根性無しだから、すぐに楽をしようとするからねぇ。まったく、誰に似たんだか。さっ、そろそろ帰ろうかねぇ。今日の診察は私で最後なんだろう?」
比嘉さんは数分前まで俯いていたのが嘘のような笑顔でそう言った後、丸椅子から腰を上げた。いつものパターンだ。
「えぇ、比嘉さんで最後です」
僕がそう言って机の上でカルテを揃えていると、比嘉さんは僕の胸に付けられた名札をジッと見つめて首を傾げる。
「どうされました?」
「いや、今更だけどさ、先生の名前って何て呼ぶんだろうなぁと思ってね。前付けていた名札、笠井って苗字だけだっただろう? その永久の永に笑うって文字の組み合わせは初めて見たからねぇ。エイワさんか?」
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