第二章 咲希-さき-

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『あの目の周りのシミは、斑点じゃなかった。絶対に死相じゃない。咲希に死相が出るなんて絶対にない。きっと肌の調子が悪かっただけだ……きっと』 そのことだけを考えながら、自宅へ車を走らせた。 咲希は僕が霊を見ることができるのは知っている。しかし、僕が人の顔を見るだけで、その人の死期がわかるということは知らない。 言ったとしても、今の咲希ならきっと受け入れてくれると思う。でも、僕は言わなかった。 それを咲希に言って、もし周りにいる大切な誰かに死相が出たとしても、僕にはどうすることもできないから。 死期を伝えることは出来ても、死期を延ばすことは出来ない。 命の終わりは突然訪れる。その突然訪れる終わりを、指をくわえて見ていることしか今の僕には出来なかった。 咲希とは十年以上付き合ってきたが、彼女は健康そのもので、風邪すら引いた所を見たことが無い。 次に咲希に会った時に、目の周りにあったシミが消えていることを願い、僕は自宅へ帰っていく。
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