プロローグ

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「ハハ、その話はまた今度という事で」 僕がそう言うと、比嘉さんは残念そうな笑みを浮かべて再び腰を上げた。 「仕方ない。今日は諦めて帰るけど、私が死ぬまでには聞かせてよ?」 「まーたそんなこと言って」 「あっそうそう、今度トウキビ取りにおいで。なんなら夕飯も食べていけばいいからさ」 比嘉さんはそう言って僕に背を向け、診察室から出て行った。 それから数時間後、診察室の電気を消してリビングへ移動する。白衣をハンガーに掛け、ベッド脇に置かれた写真立てを手に取る。写真立てには色褪せた写真が入っていた。 「久し振りに、平久保崎灯台にでも行こうか」 そう言って写真立てを小脇に抱えた僕は、車のキーを探し始める。 君の、咲希の笑顔を思い出しながら。
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