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永遠に笑い続ける子で居て欲しいという母の願いが、この永笑という名前には込められている。
僕には産まれた瞬間から父は居ない。
母が僕を身籠った事を知ると同時に、母の目の前から去っていったらしい。残ったのは父が作った多額の借金だけだった。
だから僕には、産まれた時から親と呼べる相手は母一人だった。といっても別に父を憎いとは思わない。憎もうと思っても、顔すら見たことが無い父を憎みようが無かったのだ。
だが、一番大きな理由は母が父を憎んでは居なかったからだろう。
「お父さんはこの漁師町のヒーローで、毎日海の平和を守っているんだよ! だから家にはずっと帰れないの」
これは、僕が物心ついた頃に母から毎日のように聞かされていた言葉だった。今思えば、コレは洗脳の一種だったのかもしれない。
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