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彼は、さっきまで私を押しつけていた力は何処へやら、ものすごく優しく私を抱き締める。
私は、久しぶりに子供みたいに泣いた。近所迷惑だったかもしれないけど、そんなことはこの際どうでも良かった。
暫く泣き続けて、ようやく涙が引っ込んだ頃。
私の耳元で、大好きな声が呟く。
「お互い、もっと話をしようね」
「うん」
「嫌なことは嫌って言って、したいことも素直に言うこと」
「はーい」
「素直でよろしい」
「だって怖かったもん」
「ごめんてほんと」
「えーどうしようかなー」
「許してくださいー」
「えー」
「あんまり意地張ってると、また襲っちゃうよ、お嬢さん」
「それはやめてー、ってちょ、ほんと待って!」
「待たない。もう散々待ったもんねー」
「待ってって言っ―――」
その日は、というかその日の朝は、不眠症など関係なく、二人揃ってぐっすり眠れるだろうな。なんて、頭の隅で思ったりしたことは余談である。
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