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不眠症彼女ちゃんとコーヒー彼氏くん
「どうしたの、また眠れない?」
彼はドアを開けて微笑んだ。月明かりにピアスが光る。私の返事を待たずに、狭い玄関に迎え入れる。
「ううん、別に」
今日は眠れなかったわけじゃない。恐らく、睡眠薬でも飲めばすんなり眠りにつけただろう。
「珍しいね、眠れないわけでもないのに、わざわざ俺の所まで来るなんて」
「何となく」
何となくか、と少し寂しげに笑う彼。
「ココアでいい?」
「うん。ありがとう」
「いーえ」
居間のちゃぶ台の前に私を残して、彼は台所へ向かう。
今日も、彼のアパートは台所の電気しかついていない。でも暖房はちゃんと効いていて、外とは大違いの暖かさだった。出掛けに羽織ってきたコートを脱いで脇に置く。
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