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始めは、お前の為だったらどんな都合のいい男にでもなろうと思ったよ。
あやめが笑ってくれるのは嬉しいし。
でもさ、俺の事も少しは考えてくれよ。
俺がお前のことを考えるみたいに、お前にも俺の事を考えて欲しいって感じるのは、これは、俺が悪いのかな。
見返りを求めるなんて最低な奴がやることだと思って我慢してたけど、やっぱり、本当に悪いことかな。
頭上から小さく紡ぎ出される言葉は、何の感情も入っていないような、しかし確実に私を突き刺して責め立てるような、冷たいものだった。
翔は見た目は全然力も無さそうでほっそりした身体をしている。しかしそれでも、引きこもってばかりで筋力もくそもない、そもそも全然体格も違う女一人を押さえつけるなんて、きっと翔には造作もないことで。
あのキスも。きっと彼がしたいようにするキスはあんな風なんだろう。今まで、私に合わせてくれていたのだ。
「ごめん、なさい…っ」
私は、何も分かってなかった。彼のことも、私がしていることの酷さも。彼が私を理解して、甘やかしてくれることに乗じて、彼に影で無理をさせてしまっていたんだ。
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