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彼の立場に立ってみれば、自分がどれだけ自己中心的な女か、簡単に分かる。こんな真夜中に、自分だって疲れているのに、来るかも分からない彼女を待って一夜を明かしたり、せっかく来たかと思えば、ただ同じ部屋で睡眠を取ったりするだけで。
それを、翔なら受け入れてくれる、と押しつけて。
最低だな、私。
「いいよ」
不意に、手首が自由になった。彼が手を退けたのだ。仰向けに倒されたままの私の横に、彼が座り直す。恐る恐る起き上がって顔を見上げると、いつもの私が大好きな彼の笑顔に戻っていて、
「俺こそ、急にごめんな」
その声も、いつもの、ドアを開ける時みたいな、優しい声だった。硬くなっていた身体が、一気に解ける。
「怖かった?」
「…うん」
「そっか、ごめん」
「ううん、悪いの、私だもん。こっちこそ、ごめん、」
「はいはいいいのいいの、いいから。そんなに泣かないで」
言われて、視界が酷くぼやけていることに気がついた。意識した途端に、涙の量が更に増えた気がした。袖で拭っても拭っても、とめどなく溢れる。
彼が、遠慮がちに両手を広げた。
「さっき、あんなことしたから、無理にとは言わないけど……こっち、おいで?」
困ったように笑う彼の懐に入り込もうとして、一瞬さっきの恐怖が脳裏を駆けた。彼の表情を伺う。
確かにさっきは怖かった。けど。
「翔~っ」
「おわっ、ちょっ、勢いが…」
流れる涙もそのままに、私は彼に抱きついた。今度は驚くのは彼の番だった。
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